基礎検査の結果、無排卵や排卵しにくい体質であることがわかった場合、以下の方法で治療を進めてゆきます。
排卵誘発剤とは
卵子が卵巣から排出(排卵)される時に、卵子の成長を助け、成熟した卵子の排卵を促す薬のことを、排卵誘発剤といいます。一般には、月経不順や無月経、排卵障害が原因の不妊症の治療に使われる薬ですが、排卵が正常にある場合でも、人工授精や体外受精のときに、妊娠率を上げる目的で用いられる場合もあります。
経口排卵誘発療法
飲み薬による排卵誘発剤で卵胞の発育を促進し、また、黄体機能の改善を図ります。
①クロミフェン(クロミッド)
クロミフェンを生理開始3日目から5日目の間に服用開始します。服用開始日を遅らせると、発育卵胞数が減少する可能性もありますが、採取卵胞数を多少調整可能にする場合もあります。
※なるべく自然な方法を希望するが、完全自然排卵周期法では卵胞成長が認められない方や、卵巣の機能が低下している方(FSH高値、AMH低下、前胞状卵胞=アントラルフォリクルが3個以下など)に適しています。
②シクロフェニル(セキソビット)
性腺刺激ホルモンが不足すると、排卵が困難になります。シクロフェニルの作用は、その性腺刺激ホルモン(卵胞刺激ホルモン)の分泌を増やすことで、十分な性腺刺激ホルモンにより卵胞が大きく育ち、排卵しやすい状態にします。
同類薬のクロミフェン(クロミッド)に比べ、効果はやや劣るかもしれませんが、頸管粘液の分泌抑制が少ないというメリットがあるため、排卵障害が比較的軽い方や、排卵を早めたい方などに用いられます。
ゴナドトロピン療法(HMG-HCG療法)
注射による排卵誘発剤で卵胞の発育を促進し、タイミングよく排卵を誘発するとともに、黄体機能の改善を図ります。
ゴナドトロピン(hMG-hCG)療法とは、排卵障害による月経異常や、不妊症の女性に対して、卵胞の成長と排卵を注射で促す治療法です。
ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)は、脳下垂体から分泌されるホルモンの一種で、「卵胞刺激ホルモン(FSH)」と「黄体形成ホルモン(LH)」の2つがあります。これらは、エストロゲンとプロゲステロンという2つの女性ホルモンの産生・分泌に大きく関わっています。また、卵胞刺激ホルモン(FSH)は卵胞の発育を促し、黄体形成ホルモン(LH)は排卵を誘発したり着床環境を改善するなど、排卵に至るまでのプロセスでゴナドトロピンが重要な役割を果たします。
この2種類のゴナドトロピンの作用を、hMG製剤とhCG製剤の注射を打つことで補い、排卵を誘発するのが、ゴナドトロピン(hMG-hCG)療法です。
hMG製剤
hMG製剤は、閉経後の女性の尿から抽出・精製された薬で、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)の両方を含みます。製品によって、2つのホルモンの含有比率は異なります。
精製hMG製剤(FSH製剤)は、hMG製剤からLH成分を取り除いたもので、FSH作用を持っているため、投与すると卵胞の発育が促されます。
hCG製剤
hCG製剤は、妊婦の尿から精製されたものです。FSH作用があるhMG製剤を投与し、充分な大きさまで卵胞が発育したあとに、LH作用を持つhCG製剤を投与し、排卵を誘発します。