日本では、子供が欲しいと願い、特に避妊をせず夫婦生活を1年以上営んでいても妊娠しない場合に、「不妊症」という言葉が使われます。一度も妊娠したことのない方を原発性不妊症、妊娠の既往があるものの、その後妊娠しない方を続発性不妊症と呼んでいます。 不妊症の原因は大きく分けて、10余の原因が考えられます。 それらの中からひとつ、あるいは複数が関与し合って起こり、同時に、治療法も人それぞれに異なってきます。 不妊の原因を診断するのは容易ではない上、医師が関わることのできる部分も限られています。 また、年齢を重ねるごとに女性の受胎能は低下するので、医学的治療を早く受けるほど妊娠の可能性が高くなることは事実です。
不妊はあなたたちだけに起こっているわけではありません。非常に多くの夫婦があなたたちと同じようなことを経験しています。 専門家の記述によると、子供を欲しいと思っているのにできない夫婦は10組に1組いると考えられています。 前述のとおり、妊娠しない原因は様々です。また、不妊は女性だけの問題ではありません。 30~40%は女性側に原因があり、30~40%は男性側に原因があると言われ、15~30%は女性と男性の双方に原因があると言われています。 残りの5~10%は原因が特定できません。つまり、男女とも不妊の確率は同じなのです。 不妊の原因を調べ適切な治療を行っていくためには、夫婦の協力が必要不可欠です。
治療は不妊の原因によって決まってゆきます。原因が解れば明確な治療が行え、妊娠成立の可能性も高くなります。 まず、専門医による基本検査で、不妊の原因を探ることからスタートしましょう。
一般的な治療の流れ
最初の6ヶ月は、不妊治療の理解を深めていただくと共に、基本的な検査で不妊の原因を探りながら、性交のタイミングなどを指導させていただきます。
6ヶ月目から2年の間は、以下の方法のうち、あなたの状態に合わせた治療を進めてゆきます。
●経口排卵誘発療法
●ゴナドトロピン療法/HMG-HCG療法(排卵誘発法)
●ドパミンアゴニスト療法(ホルモン療法)
●人工授精(AIH)
その他、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の場合には、それらに合わせた治療を行います。腹腔鏡検査、子宮鏡検査が必要になる場合もあります。また、男性不妊外来にも対応させていただきます。
初診時に行う検査
経腟超音波検査
子宮の形態や筋腫等の有無、卵巣腫瘍の有無、卵胞発育の状態や個数等を診る
子宮頸がん検査
がんのステージによっては治療後でも妊娠が可能
プチ講座Vol.5ページ▶
血液一般検査
血液中の細胞成分を調べる
卵巣予備能検査(AMH)
卵子の残存数の推定や多嚢胞性卵巣の診断に用いる
プチ講座Vol.14ページ▶
血中プロラクチン測定
高値なら排卵障害や黄体機能不全・卵の質の低下・着床障害を起こす場合もある
プチ講座Vol.22ページ▶
クラミジア抗原検査
重症化すると不妊・不育・異所性妊娠の原因となり得る
感染症検査
梅毒・HBV・HCV・HIVの検査 赤ちゃんに感染する場合がある
血液凝固系検査
抗リン脂質抗体症候群の検査 不育症(流産)の要因となる
プチ講座Vol.23ページ▶
甲状腺機能検査
生理不順など不妊原因となる
プチ講座Vol.22ページ▶
血中ビタミンD測定
免疫システムの調整、妊娠にも関与
サプリメントページ▶
風疹抗体検査
妊娠1か月で妊婦が感染すると50%以上の頻度で赤ちゃんに感染し、目や耳等に障害を持つ
BMI(身長・体重)
痩せすぎ・太りすぎは妊娠・出産に影響する
プチ講座Vol.18ページ▶
月経期の検査
血中FSH・LH測定
卵胞発育に関与するホルモン
排卵期の検査
フーナーテスト(性交後検査)
性交後、子宮頚管粘液中の精子を検査する
卵胞発育・排卵モニタリング
経腟超音波で卵胞が発育し、排卵が起こったか確認する 頸管粘液から排卵を推定する
尿中LH検査
排卵時期を推定する
血中E2測定
発育した卵胞から産出されるホルモン
黄体期の検査
血中プロゲステロン測定
着床・妊娠に欠かせないホルモン
子宮内膜厚測定
着床の場である子宮内膜の状態を診る
随時行う検査
精液検査
射精した精液中の精子の状態を診る検査
一般不妊治療男性不妊ページ▶
子宮卵管造影検査
子宮の形態や卵管の詰まり・癒着等を診る検査
子宮鏡検査
子宮内の筋腫やポリープ等を診る検査
抗精子抗体(精子不動化抗体)検査
精子の動きを妨げる抗体を調べる
血中テストステロン(男性ホルモン)検査
多嚢胞性卵巣症候群の診断基準となる
プチ講座Vol.1ページ▶
インスリン抵抗性検査
多嚢胞性卵巣症候群の原因となり得る
プチ講座Vol.1ページ▶