臨床へ向けた1STEP胚融解の検討

第57回中国四国生殖医学会学術講演会 2024

(稲飯健太郎、小野楓美花、山下誠二、笠岡永光)

背景

ガラス化法における胚融解のプロトコールは、若干の組成や浸漬時間が異なるものの、3STEPでの融解法が主流である。しかしながら、この方法では6-15分の操作時間がかかり、また室温下の工程が胚に影響する可能性がある。耐凍剤の毒性も考慮すると、融解操作は可能な限り短時間であるほうが好ましいと考えられる。近年、Fujifilm Irvine Scientific社(F社)の Thawing Solution(TS)のみの1STEP胚融解でも従来法と比べ、継続臨床妊娠率、着床率等の臨床成績が向上されたとの海外論文報告がなされたこと、同社にてプロトコール化がなされていることから、臨床導入を目的とし、廃棄胚盤胞を用いた検討を行った。

方法

研究同意の得られた25個の廃棄胚盤胞を用いた。ガラス化凍結はA・B2社のKITを用いそれぞれのプロトコール通りに行った胚盤胞であった。融解はF社のTSを用い1分間凍結胚盤胞を浸漬後、タイムラプスインキュベーターで培養を行った。融解後の生存性、および回復状態を観察し、臨床でプロトコール通り融解した胚盤胞の状態と比較した。

結果

1STEP融解後の生存率はA社・B社で凍結した胚盤胞ともに100%で、臨床での成績(A社97.7%、B社98.7%)と有意差は認められなかった。また、1STEP融解4時間後に元のサイズに完全に回復した割合はA社78.6%、B社81.8%であり、臨床での成績(A社77.4%、B社68.4%)と有意差は認められなかった。

考察

胚盤胞の融解において1STEPの1分間という短時間であっても、生存率、回復率において従来法と同等の成績であった。臨床成績が同じであるならば、操作の簡易化、短時間化は培養士にとってだけでなく、医療機関、患者にもメリットがあると考えられる。今後さらに検討を重ねデータを解析し、臨床へ向けて準備を進めたい。