PCOSに対するメトホルミンとグリスリン投与の臨床成績
第38回日本受精着床学会学術講演会 2020
(神﨑 珠里、濱咲 舞、稲飯 健太郎、笠岡 永光)
目的
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の排卵障害を改善する目的で、糖尿病の薬であるメトホルミンが用いられることがある。同様に、マイタケから抽出される天然由来成分であるグリスリンにも同じような効果があると報告されている。今回、メトホルミンの継続投与後グリスリンを継続投与し、その成績をまとめた。
方法
2016年12月から2017年11月の間にPCOSと診断され、インフォームドコンセントを得た21例を対象とした。患者背景は平均年齢30.6歳、平均BMI22.6であった。3ヵ月間メトホルミン(以下Mt)を継続投与し、その後3ヵ月間グリスリン(Ovu270 サンメディカ社 以下Ovu)を継続投与した。検討1)投与前後のホルモン値を検討前vs Mt投与後vs Mt+Ovu投与後でそれぞれ比較した。検討2)Mt投与中とMt投与+Ovu投与でのOvu投与中の排卵率をそれぞれ比較した。
結果・考察
検討1)LH、FSH、テストステロン、プロラクチン、インスリン、HOMA、HbA1cでいずれも有意差を認めなかった。しかしLH/FSH比にして比較すると1.19vs 0.80vs 0.72で検討前とMt投与後、検討前とMt+Ovu投与後でそれぞれ有意差を認め(p<0.01)、PCOSに対しLH/FSH比を正常にすると考えられた。検討2)Mt投与中とOvu投与中の排卵率は、50.0% vs 70.2%でOvu投与中の排卵率が有意に高かった(p<0.05)。また投与前のHOMA値が1以下と1.1以上で分けてMt投与中とOvu投与中の排卵率を比較すると、1以下では44.4% vs 57.1%で有意差は認められなかった。一方1.1以上では48.4% vs 75.0%と有意差を認めた(p<0.5)。これらよりOvu投与中の排卵率が高い結果となり、特にHOMAが1.1以上で効果的である可能性が示唆された。Mt投与期間に1例、Mt後Ovu投与中(検討期間内)に6例、検討後もOvuを継続して4例が妊娠に至った。今後Ovu単独投与の症例を増やし、比較検討を行っていく。