顕微授精症例における精液中の運動精子濃度と臨床成績の関係
第60回日本卵子学会学術集会 2019
(稲飯 健太郎、濱咲 舞、神崎 珠里、笠岡 永光)
目的
体外受精において、良好胚獲得のためには卵子と共に精子の役割も非常に重要であることは知られている。今回、採卵当日の精液中の運動精子濃度と臨床成績の関係があるかどうかを確認した。
方法
2011年から2018年までの期間で、当日精液を採取し、顕微授精を行った929周期5506個を対象として、後方視的に検討を行った。運動精子濃度によりそれぞれ精液1mlあたり、10万個未満、100万個未満、600万個未満、1000万個未満、1000万個以上に分けて比較した。
結果
それぞれの群間で平均年齢に有意な差は認められなかった。受精率はそれぞれ45.9%(67/146)、71.4%(297/416)、71.5%(773/1304)、74.1%(386/521)、74.1%(2477/3342)であり、10万個未満ではその他の群と比較し有意に低い結果となった。胚盤胞発生率は36.0%(18/50)、57.7%(162/281)、60.2%(446/741)、59.6%(218/366)、58.1%(1336/2300)で、10万個未満ではその他の群と比較し有意に低い結果となった。良好胚盤胞率は66.7%(12/18)、75.9%(123/162)、69.7%(311/446)、73.4%(160/218)、71.0%(949/1336)で、有意差は認められなかった。
考察
運動精子濃度が10万個未満/mlと非常に低い場合、培養成績がかなり悪化する結果となった。妻の年齢にもよるが、重度の乏精子症患者に対しては、ARTを始める前に男性不妊症の治療を行うこと、あるいは並行して行うことが有効であるかもしれない。