2種のガラス化凍結保存製品を用いた臨床成績の比較
第41回 日本受精着床学会学術講演会 2023
(稲飯 健太郎・神﨑 珠里・小野 楓美花・笠岡 永光)
目的
生殖補助医療で行われるヒトガラス化凍結保存法は初の成功例から30年以上経過している。その間に、胚の凍結保存や融解を行う際に使用する液は数種類市販されているが、ベースになる培養液、耐凍剤、糖類、添加剤、凍結デバイス、プロトコールなどそれぞれ特徴が異なる。今回、2種の製品間で成績を後方視的に検討したので報告する。
方法
2012年から2020年までにA社の液とデバイスで凍結し融解を行った385周期416個(A群)、2020年から2023年までにB社の液とデバイスで凍結し融解を行った616周期675個(B群)の胚盤胞を検討対象とした。両群ともオープンタイプの凍結法で行った。移植時の胚生存率、状態、単一移植時の妊娠率、流産率を検討項目とした。
結果
平均年齢はA群35.8±4.6歳、B群35.7±4.8歳で差を認めなかった。胚盤胞を融解後、移植時の生存率はA群97.6%(406/416)、B群99.3%(670/675)で有意にB群が高かった(P<0.05)。良好胚盤胞では生存率に差はなかったが、不良胚盤胞に絞るとA群94.9%(131/138)、B群98.6%(213/216)で有意差はないものの、B群が高い傾向だった(P=0.087)。移植時にハッチング又はハッチドしていた胚の割合はA群79.8%(332/416)、B群63.5%(415/654)であり、A群で有意に高かった(P<0.001)。単一移植時の妊娠率はA群36.0%(123/342)、B群34.2%(180/526)で有意差はなかった。同様に流産率も19.5%(24/123)と22.8%(41/180)で差は認められなかった。
考察
移植後の妊娠率、流産率は2種の製品間に差は認められなかったが、胚盤胞移植時の生存率や状態にはそれぞれ特徴があり、両者間の組成等の違いによるものと思われた。B社のガラス化凍結保存製品は形態不良胚盤胞などのセンシティブな胚の凍結に特に有効であることが示唆された。