凍結時の胞胚腔の収縮・拡張が移植後の成績に及ぼす影響

日本生殖医学会 2014

(稲飯 健太郎・濱咲 舞・兼光 珠里・笠岡 永光)

目的

胚盤胞を耐凍剤で平衡化する際の胞胚腔の収縮と拡張の状態は、個々の胚により全く異なっている。今回、胞胚腔の収縮・拡張が融解移植後の成績に影響を及ぼすかどうかを検討した。

方法

2011年1月から2014年3月までにHRT周期で凍結胚盤胞を1個移植した376周期を対象とした。胚盤胞凍結にはKITAZATO社のVITRIFICATION KITを用い、耐凍剤で平衡化中に胞胚腔が収縮し時間内(15分以内)に拡張した胚をA群、収縮後にあまり拡張しなかった胚をB群、耐凍剤で平衡化しても収縮しなかった胚をC群とし、融解移植後の妊娠率、流産率、出生率を比較した。

結果

移植した凍結胚盤胞の内訳は、Gardner分類で4あるいは5では、A群で76.4%(236/309)、B群で8.4%(26/309)、C群で15.2%(47/309)、3以下ではA群で83.6%(56/67)、B群で16.4%(11/67)、C群で0%(0/67)であり、3以下の胚盤胞では、平衡化中に収縮しない胚は認められなかった。妊娠率と流産率は4あるいは5ではA群で39.8%(91/236)と25.2%(31/91)、B群で34.6%(9/26)と33.3%(3/9)、C群で48.9%(23/47)と30.4%(7/23)であった。3以下ではA群で23.2%(13/56)と23.1%(3/13)、B群で18.2%(2/11)と100%(2/2)であり、凍結前の胚盤胞の拡張状態にかかわらず、どの群間でも有意差は認められなかった。出生率は4あるいは5ではA群で33.0%(35/106)、B群で22.2%(2/9)、C群で34.6%(9/26)であり、有意差は認められなかった。

考察

胚盤胞凍結時における平衡化中の収縮・拡張状態はその後の妊娠率等には影響を及ぼさなかった。拡張期の胚盤胞であっても、胞胚腔の収縮が認められない胚もあったが、移植後の成績は良好であった。